アグリテックとは?意味・市場規模・メリットをわかりやすく解説

アグリテックという言葉を聞いたことがありますか?多くの方には馴染みのない言葉かもしれません。

しかし、アグリテックは日本の農業の将来を担うとされており、注目を集めている分野です。本記事ではアグリテックの意味や注目される背景、メリット・デメリットについてわかりやすく解説します。

Contents

アグリテックとは?農業と技術の組み合わせ

アグリテック(AgriTech)とは、農業(Agriculture)と技術(Technology)を組み合わせた造語で、IT・IoT・ビッグデータなどの技術を農業で活用する取り組みを意味します。

例えば、ドローンによる肥料や農薬の散布、AIによる作物の生育の確認などです。このようなアグリテックの活用により、国内の農業の課題を解決できると注目されています。

スマート農業との違い

ここで、「スマート農業とアグリテックはどう違うの?」と思う方もいるかもしれません。

スマート農業とは、ロボットやAI、IoTなどの最新技術を活用する農業を意味します。つまり、アグリテックとスマート農業は同じ意味です。日本ではスマート農業がよく使われ、アグリテックは海外でよく使われています。

アグリテックが注目される背景

農業に携わる方にとって、アグリテックは関心の高い分野です。なぜなら現代の農業は以下の3つの課題を抱えており、これらの課題を解決できる可能性があるためです。

  • 担い手不足
  • 農業従事者の高齢化
  • 低い食料自給率

これらの問題を解決できないと、日本の農業は衰退すると予想されています。つまりアグリテックは、農業の将来を左右する取り組みといえます。

背景①担い手不足

現代の農業の課題は担い手不足です。農林水産省の調査によると、2005年の農業従事者は225万人でしたが、2020年には136万人まで減少しています。15年で約88万人も減っているのです。

また日本は人口減少がすでに始まっており、今後も人口が減少すると見込まれています。そのため、農業従事者の担い手不足がますます深刻化するでしょう。

担い手不足の対策として、農地の大規模化やアグリテックの活用、働き方改革などの取り組みが各地で行われています。

背景②農業従事者の高齢化

農業の担い手不足とともに深刻な課題は、農業従事者の高齢化です。農林水産省の2020年の調査によると、65歳以上の農業従事者は全体の69.6%にもなります。一方、49歳以下の従事者が占める割合は11%で、急速な農業従事者の減少が予想されます。

加えて若年層の割合が低いことにより、ノウハウを継承ができないことも問題です。そこでアグリテックを活用することで、ノウハウのデータ化ができるのではと期待されています。

背景③低い食料自給率

我が国の食料自給率はカロリーベースが38%、生産額ベースが58%で、世界各国と比較するとどちらも低い水準です。

出典:農林水産省「世界の食料自給率

1965年の日本の食料自給率はカロリーベースで70%以上ありました。しかし、外国産の農産物におされたり、日本人の食事が洋風化したりすることで徐々に減少し、近年は40%ほどを推移しています。

食料自給率が低いことで懸念されるのは、国内農業の衰退や外国産の穀物高騰といったリスクです。そこで政府は、2030年までに食料自給率をカロリーベースで45%、生産額ベースで75%とする目標を掲げています。

目標の達成には、農業の効率化・大規模化のためにアグリテックが必要とされているのです。

※カロリーベース食料自給率=1人1日あたりの国産供給熱量÷1人1日あたり供給熱量

※生産額ベース食料自給率=食料の国内生産額÷食料の国内消費仕向額

アグリテックの2025年の市場規模は約220億ドル

ある調査によると、アグリテックの世界市場は2019年に約132億ドルで2025年には約220億ドルと見込まれています。対して日本市場は2019年に約8億ドル、2025年は約14億ドルとされています。

日本のみならず、世界各国でアグリテックの需要が高まるため、ビジネスにおいては世界市場の取り込みも視野に入れた開発・普及が重要です。

アグリテックを導入するメリット・デメリット

アグリテックは将来を担う技術ですが、導入には以下のようにメリットもデメリットもあります。

メリット・生産性が向上する
・環境への負荷が減る
・新規参入がしやすい
・食料自給率の向上に役立つ
デメリット・導入コストがかかる
・IT技術を理解
・使いこなすのが難しい

メリット①生産性が向上する

これまでの作業をドローンやロボットがすることで、時間の短縮や大規模化を実現できます。生産性の向だけではなく、農業従事者の働き方改革にも役立つのがメリットです。

メリット②環境への負荷が減る

AIやビッグデータを活用することで、適切な量・タイミングで肥料や農薬を散布できます。つまり費用や農薬の量が減り、環境への負荷を減らせるのがメリットです。

メリット③新規参入がしやすい

農業の熟練したノウハウをアグリテックでデータ化することで、新規参入がしやすくなります。農業の経験がなくてもアグリテックのデータを活用し、生産量の最大化を目指せるためです。

メリット④食料自給率の向上に役立つ

アグリテックにより生産性が向上したり、新規参入者が増加したりすることで、食料自給率の向上に役立つのがメリットです。

デメリット①導入コストがかかる

アグリテックのデメリットは、導入コストが高額なことです。例えば無人トラクタは1,000万円~2,000万円、農業用ドローンは80万円~300万円がかかります。長期的な計画をもとに導入を検討する必要があります。

デメリット②IT技術を理解・使いこなすのが難しい

IT・IoT・AI・ドローンなどアグリテックには、様々な最新テクノロジーが活用されています。しかし技術を理解して使いこなすのは難しく、場合によっては最大限活用できないこともあるでしょう。またアグリテックを使いこなすための人材確保が難しい点もデメリットといえます。

アグリテックの国内企業の取り組み事例

「どのようなアグリテックがあるのか知りたい」という方もいるでしょう。そのような方に向けて、国内企業の取り組み事例を紹介します。

株式会社クボタ:無人トラクタ

出典:株式会社クボタ

株式会社クボタは2016年に、直進キープ機能を内蔵した田植え機やオートステアリング対応のトラクタを発売して以来、農機の自動運転・無人化の分野を牽引してきました。

すでに自動運転のトラクタ(アグリロボトラクタ)を開発しています。タブレットによる遠隔操作だけではなく、有人トラクタで無人トラクタを監視し、1人で2台同時作業をすることも可能です。

ほかにも、自動運転アシスト機能搭載のアグリロボコンバインを発売しています。

株式会社IHIアグリテック:リモコン小型草刈り機

出典:株式会社IHIアグリテック

農作業では雑草の草刈りが欠かせません。しかし草刈り機による作業は重労働に加えて、ケガのリスクがあります。

株式会社IHIアグリテックのリモコン小型草刈り機(リモコン小型ハンマーナイフモア)は、そのようなリスクのある作業を遠隔操作で安全にできる農機です。最大45度の傾斜地や沼地にも対応しています。

ヤンマー:農薬散布用ドローン

出典:ヤンマー

ヤンマーが発売している農薬散布用ドローン(産業用マルチローター)は、中山間地帯や大規模な農業における農薬散布を効率化できるアグリテックです。

人力での農薬散布は、動力散布機を担いで作業するため大変な重労働です。さらに、散布した農薬を浴びることによる健康への影響も心配されています。

そのような、きつくて危険な作業を安全に効率化できるのが農薬散布用ドローンです。

技術を生かしてアグリテックに参入しよう

アグリテックは農業従事者の減少・高齢化の対策に加えて、農業の大規模化・効率化に役立つとして注目されています。今後の日本の農業では、人材不足から農地の集約による大規模化が進むと予想され、ますます需要が高まると見込まれています。 IT・IoT・AIなど得意な技術を生かし、アグリテックの分野に挑戦してみるのも面白いかもしれません。