
日本は人口減少に加え、市場が成熟している分野が多くあります。そのため、既存事業は安定しているものの、「新たな成長エンジンが見えない」といった、頭打ち感を抱えているBtoB企業の経営者様も多いのではないでしょうか。
この閉塞感を打破するための方法の一つとして、BtoCへの事業転換が挙げられます。これまで培ってきた技術や研究開発力を生かし、新しい市場を開拓することで、成長の機会を拡大できるためです。そこで本記事では、BtoCへの事業転換で成長を実現した国内大手企業の事例を詳しく解説します。
BtoBやBtoCの意味については、「ビジネス用語解説」の記事をご参照ください。
BtoB企業が事業転換を推進するメリット
BtoCへの事業転換は、BtoB企業に新たな成長機会をもたらします。ここでは、事業転換によって期待できる4つのメリットを紹介します。
メリット① 新たな顧客層の獲得
BtoB企業がBtoCへ進出するメリットは、これまで接点のなかった一般消費者という新たな顧客層を取り込める点です。
BtoBの場合、取引先となり得る企業数は限られており、取引の規模も大きく変動しにくいのが特徴です。一方、BtoCは一般消費者が対象のため、潜在顧客の母数が圧倒的に大きいという特徴があります。
そのため、BtoB企業がBtoCへ参入すると、これまでとは異なる市場で事業拡大を目指せます。
メリット② 収益構造の強靭化
BtoC事業を並行して展開することで、新たな収益源を確保でき、結果として収益構造をより強固にできます。
BtoB事業は1社との契約が長期化しやすい反面、特定の取引先や業界の景気に左右されやすいのが特徴です。特に主要顧客が限られている場合では、その顧客の業績や方針の変化が、自社の売上に直結するリスクがあります。一方、BtoC事業は一般消費者が対象となるため、売上が特定企業に依存しにくいのが特徴です。
このように、性質の異なるBtoBとBtoCを組み合わせて事業を展開することで、収益構造の強靭化を実現できます。
メリット③ 経営資源の有効活用
BtoC事業への参入は、BtoB企業が保有する技術力や設備、人材などの経営資源を新たな形で生かせる点がメリットです。
例えば、工業製品の製造設備を日用品や美容・健康アイテムの生産に転用するケースです。これまで特定用途に限定されていた技術やノウハウでも、BtoC市場に向けて再構築することで活用の幅が広がります。
このように、BtoB企業がBtoCへ事業を広げることは、既存の経営資源の有効活用につながり、企業全体のポテンシャルの向上に貢献します。
メリット④ 競争優位性の確保
BtoB企業が長年培ってきた技術やノウハウは、他社には簡単に真似できない独自の強みです。こうした強みを生かして開発したBtoC向けの商品やサービスは、競争優位性を確保しやすくなります。
例えば、工業製品向けの耐久性や高精度な加工技術をBtoC向けの商品に応用すると、「丈夫で長持ち」や「高品質」と評価されるでしょう。また、自社ならではの技術は模倣されにくく、競争優位性を維持しやすい点も魅力です。
事業転換の成功事例
ここまでは、BtoB企業がBtoCへ事業転換することで得られる主なメリットを紹介してきました。しかしながら、「実際にどのような企業が成果を上げているのか」「自社にも応用できるのか」といった点が気になる方もいらっしゃるでしょう。そこで、ここからは事業転換によって新たな市場を開拓し、成長を実現した日本国内の成功事例を紹介します。
富士フイルム株式会社:ヘルスケア分野への参入

出典:アスタリフト
富士フイルム株式会社はかつて、カラーフィルム(ネガフィルム)を主力商品とするメーカーでした。カラーフィルムとは、被写体の明暗や色彩が反転して写るフィルムです。アナログカメラの必需品で、中核事業として同社の成長を長年支えていました。
しかし、2000年前後からデジタルカメラやスマートフォンが急速に普及し、市場環境は一変。カラーフィルムの需要はピーク時から年率20%以上のペースで縮小し続け、最終的には100分の1以下にまで落ち込む深刻な状況に陥りました。
こうした中核事業の急激な縮小を前に、同社は早い段階から事業転換を推進します。その一つが、ヘルスケア分野への進出でした。
■化粧品ブランド「ASTALIFT」の大ヒット
事業転換のカギとなったのは、カラーフィルムの開発で培ってきた独自技術でした。同社は以下の4つの技術に着目し、2007年に化粧品ブランド「ASTALIFT(アスタリフト)」を立ち上げます。
・コラーゲン研究
・ナノテクノロジー
・抗酸化研究
・光・解析コントロール技術
これらの技術を美容領域に応用した結果、ブランド誕生からわずか3年で売上高100億円を突破する大ヒットとなりました。
技術力を起点に新しい市場へ進出したこの取り組みは、BtoB企業にも通じる点が多く、事業転換を考える企業にとって参考になる好例と言えます。
■最先端の医療機器分野にも参入
さらに同社は、写真分野で培った画像処理技術を応用し、X線画像診断システムや内視鏡システムなど、最先端の医療機器分野にも事業を拡大しました。医療領域でも強みを生かし、新たな収益源を確立しています。
■主要事業にまで成長
現在、ヘルスケア事業は同社の主要事業として、企業全体の成長を牽引する存在となっています。このように、富士フイルム株式会社は自社が持つ技術や研究開発力といった経営資源を的確に転用することで、市場縮小という脅威を新たな成長機会へと変えることに成功しました。
ダイキン工業株式会社:業務用から家庭用へ事業を拡大

出典:ダイキン工業株式会社
ダイキン工業株式会社は、世界トップクラスの空調メーカーとして知られています。しかし、その原点は飛行機用ラジエーターチューブの製造でした。創業後は軍需品の製造で事業を拡大し、国内で初めてフロンガスの生産に成功したことをきっかけに、空調事業へ本格的に参入します。
■業務用エアコンで躍進
1950年代には、国内初となる「パッケージエアコン」を開発し、日本の業務用エアコンの歴史を切り拓きました。これを機に、同社は軍需工場から空調メーカーへと事業転換し、業務用エアコン分野で確固たる地位を築いていきます。
■家庭用エアコンへの本格参入
高度経済成長期に入り、エアコンが一般家庭でも「快適な暮らしの象徴」として広まり始めた頃、同社は家庭用市場の拡大に注目しました。1972年には、年間20万台を生産できる滋賀工場を新設し、家庭用エアコンへの本格的な投資を開始しました。
業務用エアコンで培った技術やノウハウを家庭向けにも応用したことで、同社の家庭用エアコンは高く評価され、国内市場でシェアを獲得しています。
■グローバル企業へ成長
現在、同社は海外売上比率が7割を超えるグローバル企業に成長しています。このことから、ダイキン工業株式会社は事業転換によって成長した成功事例と言えるでしょう。
BtoCへの事業転換で成長を促進
企業が持続的に成長していくためには、新たな市場への挑戦が重要で、その選択肢の一つがBtoCへの事業転換です。
BtoC市場は一般消費者を対象とするため規模が大きく、これまで培ってきた技術力や設備、人材などの経営資源を新たな形で生かせる点が魅力です。さらに、自社ならではの強みを生かすことで、競争優位性の確保にもつながります。
既存事業に伸び悩みを感じているのであれば、この機会にBtoCへの事業転換を検討してみてはいかがでしょうか。

