ESGとは「環境」「社会」「ガバナンス」の頭文字から作られた言葉で、社会で起きている問題解決に対する企業の取り組みや投資家の投資活動のことを指します。
現在、気候変動や人権問題、貧困の格差など世界中で多くの問題を抱えています。これらの解決のためにも注目されているのがESGです。注目されている理由やメリット、課題などについて知りたい方は本記事を参考にしてください。
Contents
ESGとは
ESGとは環境・社会・ガバナンスの頭文字からとった言葉で、企業が持続的な成長のために必要な3つの観点を意味します。
・E(Environment):環境
企業の経済活動において、地球環境の悪化に対してどのように取り組むのかが求められています。例えば、カーボンニュートラルやマイクロプラスチックへの対策です。世界は技術や経済活動の発展により、生活が豊かになる一方で、環境汚染や地球温暖化などの問題があるためです。
・S(Social):社会
「S」は、世界の社会問題への解決に向けた取り組みを意味します。例えば人材の多様性や少子高齢化、貧富の格差、労働環境の整備などです。世界にはこのような社会問題で、暮らしを脅かされている方がいるため企業にも対応が求められています。
・G(Governance):ガバナンス
ガバナンスは「企業統治」の意味で、健全な経営のための制度や管理体制の構築です。企業が不正会計やルールを度外視した経営をすると、様々な企業や個人に悪影響を及ぼす可能性があるためです。
例えば、耐震構造を偽造した建築物で不正に利益を得たとすると、その建築物の購入者や売買にかかわった業者に大きな損害がでるでしょう。悪影響は社会全体に広がることもあるため、抑止のために企業には「ガバナンス」への取り組みが求められています。
SDGsとの違い
ESGの目的は、3つの観点により持続可能な社会の発展を目指すことです。一方SDGsは、17のテーマに分類された2030年までに達成すべき169項目の目標です。ESGとSDGsの関係性は、ESGに取り組む企業が増えると、SDGsの達成が近づくと考えるとわかりやすいでしょう。
ESG投資とは?
ESG投資とは、企業のESGへの取り組みを評価して投資の判断材料にする方法です。世界持続可能投資連合(GSIA)ではESG投資の手法を以下の7つの種類に分類しています。
■ESG投資の7つの種類
種類 | 内容 |
ESGインテグレーション | 財務分析に加えて、ESGの非財務情報を投資先の判断材料にする方法 |
エンゲージメント・議決権行使 | 株主提案や議決権行使により、ESGの取り組みを求める方法 |
ポジティブ・スクリーニング | 同業他社よりもESG評価の高い企業に投資する方法 |
ネガティブ・スクリーニング | タバコ・ギャンブル・武器・人権侵害など、基準に抵触する企業を投資対応から除外する方法 |
国際規範スクリーニング | ILOやOECD、NGOなどの定める国際基準を満たさない企業を除外する方法 |
サステナビリティ・テーマ投資 | サステナビリティに貢献する企業に投資する手法 |
インパクト・コミュニティ投資 | 社会や環境に良い影響を与える技術・サービスを持つ企業へ投資する方法 |
ESGが注目されるようになった背景
ESGが日本でも注目されるようになった背景は、以下の3つが関係しています。
- 国連責任投資原則(PRI)の提唱
- 年金積立金管理運用独立行政法人の署名
- 拡大するESG投資資金
国連責任投資原則(PRI)の提唱
2006年、当時の国連事務総長により国連責任投資原則(PRI)が提唱されました。その内容は、ESGの観点を組み込んだ投資行動をするように促すものです 。
PRIに署名した投資機関は、上記の6原則を遵守した投資行動が求められ、最低履行要件を満たさなければ除名という厳しい処分もあります。
年金積立金管理運用独立行政法人の署名
2つ目のESG投資を大きく進めた要因は、2019年の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のPRI署名です。GPIFは2022年度で189兆円と莫大な資金を運用している機関です。影響力の大きいGPIFがPRI署名したことで、国内の企業・投資家からESGへの注目を集めました。
参考:年金積立金管理運用独立行政法人「2022年度の運用状況」
拡大するESG投資資金
2022年の国内のESG投資資金は310兆円で、2016年と比較すると5.8倍も拡大しています。世界規模では35.3兆ドルで3,700兆円を超えるほどです。ESG投資資金の規模が拡大していることは、ESGに取り組むことで企業価値を高められる可能性が高いことを意味しています。
企業がESGに取り組むメリット
企業がESGに取り組むのは、ESG投資の拡大やサステナブルな社会の実現に対する世界・国内の関心の高まりが理由です。「企業には手間やコストばかりかかるのでは?」と思うかもしれませんが、取り組む企業には3つのメリットがあります。
企業価値を高められる
ESGに取り組むと投資家から資金調達ができるので、企業価値を高められるのがメリットです。
またステークホルダーにも利益があるため、「エンゲージメント・議決権行使」のように、株主からESGへの取り組みが求められることもあるのです。
自社のブランディング向上につながる
ESGに取り組むことで、社会の問題に積極的に貢献している企業としてイメージアップが図れます。ひいては自社のブランディング向上につながり、顧客の獲得や認知度の向上にも役立つでしょう。
新たなビジネスチャンスが生まれる
ESGは、次世代の持続可能な社会の実現に向けた新たな技術やサービスを生み出します。それらが新たなビジネスチャンスとなり、利益として企業に還ってくることもあります。
ESGの課題・問題点
ESGはまだまだ日の浅い考え方のため、取り組む企業や投資家の双方に課題・問題点があります。
短期間の成果を評価しにくい
ESG投資は目先の利益を追求するのではなく、中長期的な発展が可能となる取り組みが評価されます。
言い換えると短期的に成果を上げられる業務については、評価しにくいという課題があります。
基準が複数あるので評価がわかりづらい
取り組みの評価基準には、第三者機関が発表するESGスコアがあります。主な機関は以下のとおりです。
- MSCI
- FTSE Russell
- Sustainalytics
- アラベスクグループ
- S&P Global
- CDP
またESGスコアには決まった採点基準がないので、機関によりバラバラです。ESG投資の種類も豊富で、評価基準もバラバラなので投資家は判断が難しくなります。
まとめ:ESGに取り組んで企業価値を高めよう
ESGは「環境」「社会」「ガバナンス」の観点で、社会の問題解決に向けた取り組みや、投資判断の基準にすることです。
国内では年金積立金運用独立行政法人がPRI署名したことで、企業や投資家から注目を集めるようになりました。
2022年にはESG投資の規模は、国内で310兆円と非常に大きな資金が投入されています。つまりESGは、企業価値を高め、ステークホルダーの利益にもつながります。
「企業価値を高めたい」「自社のブランディングにつなげたい」という方は、ESGに取り組んでみてはいかがでしょうか。