賢く縮む地域づくり!スマートシュリンクの意味や事例を紹介

一部の地方自治体では、「スマートシュリンク」という取り組みを始めています。このキーワードは人口減少が進む中でも、持続可能な地域を実現するための考え方です。今後、全国へ広がる可能性もあるため、ビジネスパーソンにとっても押さえておきたいキーワードと言えるでしょう。本記事ではスマートシュリンクの意味や注目される背景、メリット・デメリット、事例をわかりやすく紹介します。 

スマートシュリンクとは 

スマートシュリンクは人口減少を前提に、地域の構造や公共サービスのあり方を改善し、生活の質を維持・向上させつつ公共サービスを集約化・効率化するという考え方です。日本語で「賢く縮む」という意味です。 

スマートシュリンクが注目される背景 

スマートシュリンクが注目されるのは、日本が直面する複数の社会課題に対して、解決や改善が期待されているからです。ここでは、その背景となる3つの要因を紹介します。 

人口減少 

総務省統計局の「人口推計」によると、日本の総人口は2010年の1億2,805万人をピークに減少に転じ、2024年には約1億2,380万人まで減少しています。 

この人口減少の主な原因は、出生数の減少と死亡数の増加です。2024年の出生数は約68万人、一方で死亡数は約160万人に達し、結果として約92万人の人口が減少しました。 

人口減少は地域経済の縮小や労働力不足を招くほか、学校の統合やインフラの維持が難しくなるなど、様々な社会的影響を及ぼしています。 

参考:厚生労働省「令和6年(2024)人口動態統計月報年計(概数)の概況」 

人口流出による過疎化 

2014年に「日本創成会議」が発表した「消滅可能性都市」の概念は、大きな衝撃をもたらしました。これは、2040年までに20~39歳の若年女性の人口が半減すると予測される自治体を指します。そして、全国1,799の自治体のうち896が該当すると指摘されました。 

若年女性の人口減少は、将来的な出生率の低下を意味し、地域社会の存続に深刻な影響を及ぼします。その背景には、人口減少だけでなく、都市部への流出が大きく関係しています。 

このような人口流出は地方の過疎化を加速させ、地方自治体の持続可能性を脅かす重大な課題です。こうした状況に対応する考え方として、スマートシュリンクが注目されています。 

インフラ維持の財政負担の増大 

日本では高度経済成長期に整備された道路や橋、水道、上下水道などのインフラが老朽化しています。年々、老朽化したインフラの割合が高まっており、維持や更新にかかる費用が自治体の財政を圧迫しているのが現状です。このような課題を解決するためにも、地域の規模に合わせたインフラの整備を目指すスマートシュリンクの考え方が注目されています。 

インフラ老朽化の問題について詳しく知りたい方は、「インフラ老朽化問題とは?」の記事も併せてご参照ください。 

スマートシュリンクの具体例 

スマートシュリンクは、人口減少に合わせて、持続可能なまちづくりを目指す考え方です。抽象的なため、イメージしにくいという方もいらっしゃるかもしれません。そこで、ここでは2つの具体例を紹介します。 

コンパクトシティへの移行 

コンパクトシティは、生活圏を小さな範囲に集約することで、住民の利便性を高めつつ、効率的な公共サービスの提供を目指す都市計画です。人口減少により、広範囲に分散したインフラや公共施設の維持が難しくなる中、生活に必要な施設やサービスを徒歩や公共交通でアクセスできる範囲にまとめることで、公共施設の統廃合を促進します。 

例えば、医療機関や学校、行政サービスの拠点を一か所に集約することで、維持管理コストの削減やサービスの質の向上が期待できます。こうした取り組みをしている自治体の代表例が富山市です。同市は公共交通を軸に据えたコンパクトシティの実現に向けて、以下のように段階的に計画を進めています。 

出典:富山市 企画管理部 スマートシティ推進課「コンパクト&スマートシティ・先導的モデル事業」 

関係人口を増やす取り組み 

関係人口とは、その地域に直接住んでいなくても、地域活動やイベントへの参加、観光、二地域居住などを通じて地域と関わりを持つ人々のことです。関係人口を増やす取り組みとしては、地域の魅力を発信するイベントや体験プログラムの開催、移住希望者の受け入れ体制の整備、リモートワーク環境の整備などが挙げられます。 

このような取り組みによる関係人口の増加は、人口減少が進む中、地域の未来を支える新たな担い手づくりとして期待されています。 

スマートシュリンクのメリット 

スマートシュリンクを実現すると、次のようなメリットがあります。 

  • 財政負担の軽減:インフラや公共施設を集約することで維持費を削減できる 
  • 住民の利便性の向上:都市機能が近接するため、買い物や通院などがしやすくなる 
  • 環境負荷の軽減:公共交通の利用拡大により、自動車の利用が減少し、二酸化炭素排出量の削減につながる 

これらのメリットにより、スマートシュリンクは地域の持続可能性を高めるとされています。 

スマートシュリンクのデメリット・課題 

一方、スマートシュリンクを推進する際、住民が生活拠点を移す必要性が生じることがあります。そのようなケースでは、次のデメリットや課題が懸念されています。 

  • 移住・転居への抵抗感:住み慣れた場所を離れる心理的負担や、引っ越し費用や住居変更に伴う経済的負担がある 
  • 文化の喪失:集落がなくなることで、地域独自の文化が喪失する可能性がある 

こうした課題をいかに克服するかが、スマートシュリンクの難しい点です。 

スマートシュリンクの事例 

ここではスマートシュリンクの事例として、高知県と北海道松前町の取り組みを紹介します。 

高知県:4Sプロジェクト 

高知県では人口減少により、様々な分野で担い手が不足していることから、2025年にスマートシュリンクを推進する「4Sプロジェクト」を立ち上げました。 

4Sプロジェクトは、次の4つの視点を中核としています。 

  • 集合:複数の事業体を集め束ねることで、スケールメリットを追求する 
  • 伸長:真に必要なサービスは充実(伸ばす)させる 
  • 縮小:重複するサービスの共同化や目的達成のための簡素な手法への代替等により「賢く縮小」 
  • 新規:「全国初、日本一」への挑戦を含め、前例踏襲ではなく、新しいやり方を創り出す試みを追求 

引用:高知県「人口減少社会に適応し「賢く縮む」4Sプロジェクトの推進について」 

具体的には、次のプロジェクトを重点的に取り組むとしています。 

  • 消防広域化 
  • 周産期医療体制の確保 
  • 県立高等学校の振興と再編 
  • 地域公共交通の確保 
  • 国民健康保険料水準の統一 

高知県のこのプロジェクトは、持続可能な社会の実現に向けた取り組みとして注目を集めています。 

北海道松前町:スマート・シュリンクSXビジョン 

北海道松前町は、2020年時点で6,260人が住む自治体です。しかし、2056年には人口が2,000人を切るとされています。このような背景を受けて、松前町では、2023年に「スマート・シュリンクSXビジョン」を発表しました。 

具体的には以下の項目について官民連携を進めていくとしています。 

  • 再生可能エネルギー資源を活用した脱炭素への取り組み 
  • 産業の維持・活性化 
  • デジタル技術を活用したコミュニティの維持 

このように、近年、スマートシュリンクに取り組む自治体が増えています。 

まとめ 

スマートシュリンクは、人口減少が進む自治体が持続可能な地域づくりを目指して取り入れている考え方です。導入した自治体では公共サービスの効率化や生活の利便性向上、環境負荷の軽減を図りながら、「賢く縮む」ことを目指しています。 

こうした行政の取り組みは、新たなビジネスチャンスにつながることもあります。そのため、新規事業のアイデアに悩んでいる経営者様は、ヒントを探すためにも行政や地方自治体の動向に注目してみてはいかがでしょうか。 

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