
新規事業や新商品の開発を成功させるためには、顧客のニーズを正確に把握することが不可欠です。反対に、顧客のニーズを理解せずに推進しても誰にも刺さらない企画になる可能性があります。こうした失敗を避けるために重要なのはニーズ調査です。そこで本記事では、ニーズ調査の目的や方法、役立つフレームワーク、コツをわかりやすく解説します。
ニーズ調査とは
ニーズ調査とは、顧客が抱えているニーズを明らかにするための調査活動のことです。一口にニーズと言っても、次の2種類があります。
- 顕在ニーズ:顧客自身が自覚しており、言語化できるニーズ
- 潜在ニーズ:顧客自身が気づいていない、またはうまく言語化できていないニーズ
このように、ニーズ調査は、すでに表面化している顧客の要望を把握するだけでなく、その背景にある本質的な課題や隠れた欲求まで掘り下げることを目的としています。それにより、次のような活動に役立ちます。
- 新規事業や新商品のアイデア創出
- 既存サービス・商品の改善やリニューアルの方向性の検討
- 需要の有無の検証
これらはいずれもプロジェクトの根幹に関わる要素であるため、ニーズ調査は事業の成功確率を高める上で欠かせない重要なプロセスと言えます。
新規事業・商品開発におけるニーズ調査の重要性
新規事業や商品開発のアイデアに重要なのは、良いアイデアかどうかではなく、市場に受け入れられるかどうかです。どれほど完成度の高い企画であっても、顧客のニーズとずれていれば、売上にはつながりません。
商品やサービスがあふれ、多くの選択肢が存在する現代では、ニーズの裏付けがないままプロジェクトを進めること自体が大きなリスクです。思いつきや社内評価だけを頼りに開発を進めても、市場では見向きもされない可能性があります。
言い換えると、顕在ニーズや潜在ニーズを把握し、狙うべき市場や提供すべき価値を明確にすることで事業の成功確率は高まります。そのために欠かせないのがニーズ調査なのです。
ニーズ調査の手法

ニーズ調査の代表的な手法には、次の4つがあります。
- アンケート調査
- インタビュー調査
- 行動観察調査(エスノグラフィー)
- ソーシャルリスニング
それぞれ特徴や得意分野が異なるため、調査内容や目的に応じて使い分けることが重要です。
アンケート調査
アンケート調査は、あらかじめ用意した調査票を用いて、多くの顧客から回答を収集し、課題やニーズの傾向を把握するための調査手法です。回答の集め方には、郵送調査や電話調査、Web調査、街頭調査など複数の形式があります。
向いている場面
- 定量的に顧客のニーズを把握したいとき
- 仮説の妥当性を定量的に検証したいとき
アンケート調査は、定量的な調査に向いていますが、設問次第で定性調査にも活用できる点が特徴です。選択式の質問で全体の傾向を把握しつつ、自由記述欄で理由や背景を探るなど、目的に応じて質問形式を使い分けることが重要です。
インタビュー調査
インタビュー調査は、対象者と対話をしながら、行動や意思決定の背景、ニーズを深く理解するための調査手法です。掘り下げた質問をすることで、潜在的な課題やニーズを模索できます。
向いている場面
- 課題やニーズの背景を深く理解したいとき
- 潜在ニーズを探索したいとき
ただし、インタビュー調査は調査人数が限られるため、得られる情報に偏りが生じる可能性があります。
行動観察調査
行動観察調査は、ユーザーの買い物や利用シーンを実際に観察し、本人も言語化できていない不便や工夫を見つけ出すための調査手法です。「どのように使っているか」という行動そのものに着目することで、アンケートやインタビューだけでは捉えきれない、本質的な課題やニーズを明らかにできます。
向いている場面
- 顧客の本音や潜在ニーズを模索したいとき
- 既存商品やサービスの利用シーンから、非効率な動きや無駄なプロセスを洗い出したいとき
一方で、行動観察調査は調査の質が観察者のスキルに大きく左右される点に注意が必要です。細かな行動やちょっとした工夫を見逃さずに記録し、そこから意味のある示唆を引き出す観察力と分析力が求められます。
ソーシャルリスニング
ソーシャルリスニングは、SNSに投稿されたユーザーの発言を収集・分析する調査手法です。顧客の評価や不満、関心などの声からニーズを探ります。
向いている場面
- 顧客の生の声を確認したいとき
- 市場の動向やトレンドを把握したいとき
ただし、情報量が膨大で精査が難しく、SNSの匿名性からユーザーの属性を特定しにくいという課題もあります。
ニーズ調査に役立つフレームワーク

ニーズ調査は、フレームワークを使うことで、情報を体系的に整理・分析しやすくなります。ここでは、ニーズ調査に役立つ代表的なフレームワークとして、「RFM分析」と「共感マップ」を紹介します。
RFM分析
RFM分析とは、次の3つの指標を用いて顧客を分類・分析する手法です。
R(Recency:最新購入日):最近いつ購入したか
F(Frequency:購入頻度):どれくらいの頻度で購入しているか
M(Monetary:購入金額):どれくらいの金額を使っているか
これら3つの視点から、顧客を評価・グループ分けして分析するのがRFM分析の特徴です。
ニーズ調査においてRFM分析が役立つ理由は、どの顧客層のニーズを優先的に深掘りすべきかを判断できる点にあります。例えば、R・F・Mの全てが高い優良顧客層を分析すれば、「なぜ選ばれているのか」「どんな価値に満足しているのか」といった、自社の強みにつながるニーズを探れます。
一方で、以前は購入していたものの、最近は購入頻度が落ちている顧客層を分析すれば、「なぜ使わなくなったのか」「どこに不満があったのか」といった、改善のヒントが得られるでしょう。
このようにRFM分析は、ニーズ調査の対象を戦略的に絞り込み、顧客層ごとのニーズを効率よく探るために有効なフレームワークです。
RFM分析の詳細については、「RFM分析とは?目的、メリット、分析方法についてわかりやすく解説」の記事をご参照ください。
共感マップ
共感マップは、特定のターゲットユーザーへの理解を深めるためのフレームワークです。ユーザーの行動や感情を、主に次のような観点から整理します。
- 見ていること
- 言っていること
- 聞いていること
- 考えていること
- 痛み・ストレス
- 得られるもの
インタビュー調査や行動観察調査で得られた情報をこのフレームワークに当てはめて整理することで、ユーザーの行動だけでなく、その裏にある感情や考えを整理・分析できます。その結果、調査データから潜在ニーズを探るための有効な手がかりを得られます。
共感マップの詳細については、「顧客理解を深める共感マップとは?目的や書き方を徹底解説」の記事をご参照ください。
ニーズ調査のコツ
ニーズ調査の精度を高めるには、ポイントを押さえた上で実施することが大切です。ここでは、主なコツを紹介します。
- 調査の目的を明確に定義する
「何を明らかにしたいのか」「どの意思決定に活用するのか」といった調査の目的を事前に明確にすることで、調査や分析がぶれにくくなります。
- 目的に応じた調査手法とターゲットを選定する
目的によって、適切な手法やターゲットは異なります。目的から逆算して、選定することがポイントです。
- 複数のターゲット層を比較する
一部の顧客層の意見だけをもとに判断すると、市場全体のニーズを見誤るリスクがあります。例えば、自社ユーザーだけでなく、競合商品・サービスを利用している他社ユーザーも含めて比較することで、「自社が選ばれている理由」と「選ばれていない理由」の両方を把握できます。このように、属性の異なる複数のターゲット層を比較することで、ニーズ把握の精度が向上します。
- 先入観を持たずに実施する
あらかじめ結論を決めつけた状態でニーズ調査に臨むと、調査結果に影響を及ぼす恐れがあります。例えば、質問で特定の回答に誘導してしまうと実態とかけ離れた結果になりかねません。中立的な立場で調査を実施することが重要です。
- 調査結果に対して都合の良い解釈をしない
調査結果の中には、自社の想定と合わないデータやネガティブな反応が含まれることもあります。しかし、そうした結果を意図的に排除するなど、都合の良い部分だけを解釈すると判断を誤る原因になります。ニーズ調査のコツは、調査結果を客観的な視点で評価することです。
これらのコツを踏まえて調査を実施し、得られた結果を関係者間で共有することが大切です。
ニーズ調査で新規事業の成功確率を高めよう
ニーズ調査は、新規事業や新商品の成功確率を左右する重要な調査です。新規事業を検討中の方は、調査のコツを押さえた上で活用してみてはいかがでしょうか。
しかし、実際には「対応する人員が不足している」「ニーズ調査のノウハウがない」など、実施が困難な企業様もいらっしゃるでしょう。そのような企業様に向けて、セルウェルは「新規事業支援サービス メデテル」をはじめ、各種調査の支援を行っています。ぜひお気軽にご相談ください。
