年収の壁は結局どうなった?4つの壁の最新動向と企業への影響を解説

2024年、「年収の壁」の問題が広く注目を集め、とりわけ「103万円の壁」は社会的な注目を集めました。あれから時間が経ち、「結局どうなった?」と気になっている方もいらっしゃるでしょう。

年収の壁は、働く側だけでなく、企業にとっても押さえておきたい重要なテーマです。本記事では、代表的な4つの壁の最新動向を整理し、企業への影響をわかりやすく解説します。

そもそも年収の壁とは何?

年収の壁とは、住民税や所得税、社会保険料の負担が発生する年収額のボーダーラインのことです。このラインを超えると、収入が増えたにもかかわらず手取りが減る、あるいは世帯収入が減る可能性があります。

その結果、年収の壁を超えないように就業しようとして、労働時間を短縮する「働き控え」が問題視されていました。また、子育て家庭においては就業時間を短縮することで、保育所の利用ができなくなるといった課題もあります。企業側にとっても、働き控えの影響でシフトが組みにくくなったり、繁忙期に十分な人員を確保できなかったりするなどの問題があります。その代表的な年収の壁は、次の4つです。

100万円の壁とは:住民税のボーダーライン

100万円の壁とは、住民税が課税されるボーダーラインです。多くの自治体では、年収が100万円を超えると住民税が課される仕組みとなっており、これを超えると税負担が生じます。100万円を超えた金額に対して課税されるため、前後で手取りが逆転することはありません。ただし、「税金がかかり始める最初の壁」として認識されています。

103万円の壁とは:所得税のボーダーライン

103万円の壁とは、所得税が課税されるボーダーラインです。つまり、103万円を超えると住民税に加えて、所得税も課されます。ただし住民税と同様に、超えた金額に対して課税されるため、前後で手取りが逆転することはありません。

106万円の壁とは:健康保険・厚生年金保険への加入義務

106万円の壁は、勤務先の規模が一定の条件を満たす場合に、健康保険・厚生年金保険への加入義務が発生するボーダーラインです。対象となるのは、週の所定労働時間が20時間以上、月額賃金がおおむね8.8万円以上、かつ被保険者の総数が51人以上の企業で働く労働者です。なお、106万円の壁は前後で手取りが逆転します。

130万円の壁とは:国民健康保険・国民年金への加入義務

130万円の壁とは、勤務先の規模にかかわらず、年収が130万円を超えると配偶者などの健康保険の被扶養者から外れ、勤務先の社会保険に加入しない場合には、国民健康保険・国民年金への加入が必要となるボーダーラインです。

年収の壁はどうなった?

年収の壁をめぐる制度は、2025年度税制改正や2026年度税制改正により緩和が進んでいます。ここでは、4つの壁の現状(2026年1月時点)について解説します。

100万円の壁は110万円に引き上げ

2025年度税制改正により、従来の100万円の壁である住民税の課税されるボーダーラインは、110万円に引き上げられました。ただし、自治体ごとに基準が異なる場合があるので、基準額は自治体の公式サイトで確認しましょう。

103万円の壁は段階的に引き上げ

2025年度税制改正により、所得税が課税されるボーダーラインは最大160万円(合計所得金額が200万円以下の場合)に引き上げられました。さらに、2026年度税制改正では178万円にさらに引き上げられ、最大の恩恵を受けられる層も拡大する方針です。なお、178万円への拡大は2026年から適用される予定です。

106万円の壁は撤廃される見通し

106万円の壁は、これまで月額賃金が8.8万円以上などの要件を満たす場合に、社会保険の加入対象となる基準でした。しかし、この賃金要件は今後3年以内に撤廃される予定です。

また、これまで「従業員51人以上の企業」に限定されていた企業規模要件についても、今後10年かけて段階的に引き下げられ、最終的には10人以下の企業まで対象が拡大される見込みです。

これらの見直しにより、社会保険の加入対象は拡大します。将来的には、賃金要件・企業規模要件ともに撤廃され、週20時間以上働けば、勤務先の規模にかかわらず社会保険に加入する仕組みへと移行していく見通しです。

130万円の壁は残る

130万円の壁は、引き続き維持される見通しです。ただし、働く時間を増やしても手取りが減らないよう、賃上げや手当の支給などに取り組む企業に対して、国は支援策を用意しています。このように、労働者が年収の壁を過度に気にせず働ける環境づくりが進められています。

また、人手不足対策として「一時的な収入増」であれば、勤務先の証明を条件に、130万円の壁を超えても引き続き配偶者の扶養に入ることが可能です。

年収の壁の緩和による企業への影響

年収の壁の緩和は、企業の人材活用に変化をもたらします。これまで壁を意識して労働時間を調整していたパート・アルバイトが、就業時間を延ばしやすくなるためです。特に、103万円・106万円の見直しは、繁忙期の人手不足の緩和が期待されます。

一方で、社会保険の適用拡大により、保険料の負担増や労務管理の複雑化といったデメリットもあります。そのため、今後は採用計画や人員配置、賃金設計を含めた人員計画の見直しが求められるでしょう。

また、厚生労働省では、年収の壁を意識せずに働ける環境づくりに取り組む企業に対して、助成金による支援を行っています。こうした制度をうまく活用することも、これからの人材戦略において重要です。

まとめ

年収の壁をめぐる制度は、税制改正により見直しが進んでいます。100万円・103万円の壁は引き上げられ、106万円の壁も将来的に撤廃される見通しです。一方で、130万円の壁は引き続き残るものの、企業に対する支援策も用意されています。

そもそも年収の壁の引き上げは、働く人の手取りを増やし、消費や経済活動を活発化させる効果が期待されています。こうした変化は、企業にとって新たなビジネスチャンスです。チャンスを捉えるためにも、制度の動向を継続的にチェックし、自社の人材戦略や事業展開に生かしていきましょう。

よくある質問

年収の壁に関するよくある質問をQ&A形式でまとめました。

Q1. 年収の壁とは何ですか?

年収の壁とは、税金や社会保険料の負担が発生する年収のボーダーラインのことです。

Q2. 103万円の壁はいつから178万円に引き上げられますか?

103万円の壁は、2026年分の所得税から178万円に引き上げられる見込みです。

Q3. 130万円の壁は今後も残りますか?

130万円の壁は、今後も維持される見通しです。ただし、106万円の壁は撤廃される予定で、今後は社会保険の加入対象者がさらに拡大します。その結果、106万円未満の年収でも社会保険に加入する労働者が増えると考えられています。

Q4. 106万円の壁が撤廃されることで、企業の負担は増えますか?

企業の負担は増える可能性があります。106万円の壁の賃金要件が撤廃され、社会保険の適用対象が拡大することで、これまで加入対象外だったパートやアルバイトにも社会保険料の事業主負担が発生するためです。賃金要件は今後3年を目安に撤廃される予定で、将来的に週20時間以上労働しているかどうかが判断基準となる予定です。