代替肉はだれのため?未来の食生活を支える植物由来の救世主

代替肉 業界最王手 Beyond Meat

11月1日はワールド・ヴィーガン・デー。世界中でさまざまなイベントが行われています。以前ここでもご紹介した通り、一般的な定義でヴィーガンとは「動物性の肉」「動物性の肉からできた食品(ゼラチンなど)」「動物により作られた食品(卵など)」を口にしない食生活を実践している人々を指します。

しかしもう彼らの中に「肉のようなもの」を口にしている人たちが増えるかもしれません。今回はそんな動物性由来でないフェイクミートについてみていきましょう。

代替肉とは植物由来の肉っぽい肉

代替肉(Meat alternative)とも呼ばれ、植物由来のプロテイン・脂肪・ミネラル・炭水化物・水などで構成される「肉っぽい肉」を指します。すべての構成要素が植物由来であることから英語では一般的に「plant-based meat(植物由来の肉、という意味)」という言葉が用いられています。

実際に、欧米のレストランメニュー表には、ヴィーガン対象である [v] マークは表示がないところがないですが、昨今は [pb] マーク(plant-basedのpb)がみられるところも増えてきています。

前回の「細胞肉」同様、名称に関してはさまざまな呼び方がされていますが(日本語でも人工肉、フェイクミートなどと呼ばれています)今回は「代替肉」という名称で統一していきたいと思います。

代替肉市場を市場を牽引するアメリカ企業

すでにスタートアップに限らず世界中の企業が注目し参入しているフェイクミート市場。中でも特に市場を大きく牽引しているのがアメリカ発の2社とされています。

2019年にIPOをした業界最王手 Beyond Meat

ビヨンドミート サイトイメージ
https://www.beyondmeat.com/products/

2009年LAで創業したビヨンドミート。フェイクミートといえば、と名前があがる市場の牽引役です。2013年から全米での展開も開始し、2019年5月にIPOを果たしました。その後、7月の最高値を最後に株価の下落が止まらないところではありますが、売り上げ昨年比3倍で成長をつづける同社が、依然市場を牽引しつづけています。

生化学研究者が興したインポッシブルフード(IMPOSSIBLE FOODS)

インポッシブルフード
https://impossiblefoods.com/

現状上場の気配は見せぬものの、ビヨンドミートと並び語られるのがインポッシブルフード社。スタンフォード大学の生化学研究所にいたPatrick O. Brownにより2011年に創業されました。本社はカリフォルニア。

ビヨンドバーガーパッケージ

代替肉はだれのため?背後にあるのは深刻な環境問題と人口増

代替肉を食べる人は、動物性の肉も食べる

そもそも代替肉ってどんな顧客を対象に作られたものか考えたことはありますか?冒頭で触れた、ヴィーガン実践者の食の選択肢を広めるためでしょうか?それとも単純に技術発達によるトレンド?

ここで面白い数字があります。

ビヨンドミートとインポッシブルフードによれば、ビヨンドミートの顧客のうち約93%が通常の肉も食べると回答しています。また、インポッシブルフードの顧客も、うち70%が普通の肉も食べるとしているのです(ここでの普通の肉、というのは現在の動物由来の肉のこと)。つまり、代替肉を食べる人は、動物由来の肉も食べる顧客が大多数となります。

2050年、世界は人口の50%を養うことができない

World Economic Forum(世界経済フォーラム)によると、2050年、90億人まで世界人口は膨れ上がります。現在が約70億人ですから、向こう30年で20億人もの人口がさらに増える予測ですね。そしてその増えすぎた人間を、現在の食料生産量で養える人口というのは約半分しかないという予測がたっています。

動物性タンパク質の需要は70%増加

一方で、FAO(国際連合食糧農業機関)によれば、その増えた人口の分以上に食料需要の予測をみると動物性タンパク質の需要というのは現在の状況からさらに70%増加すると言われています。
つまり、地球温暖化問題にすでに直面している私たちは、これから人口が急増していく中で食料を確保していかなければならないという問題にも同時に解決方法を模索、実践していくという非常に難しいゲームを強いられているのです。

環境にも配慮し製造される代替肉

代替肉と環境

ビヨンドミートと一般的なアメリカ産ビーフ 1/4パウンド(約100g)を比較したミシガン大学の研究によれば、前者は後者と比べ、99%の水削減、93%の土地利用の削減、46%のエネルギー削減、そして90%の温室効果ガスの排出削減をそれぞれ可能にしています。

つまり、環境問題の解決と、食料の確保。代替肉は、この問題を解決する鍵とされているのです。

代替肉は「わたしたち」全員のため

グレタ・トゥーンベリ氏が世界的に注目されていることが象徴的ではありますが、環境問題は地球上に住むわたしたちの誰しもに関わる急務なイシューとなっています。

そして今回ご紹介したように、代替肉の市場拡大はその環境問題を解決する一助にもなっています。その背景を踏まえれば、同市場の近年の急速な市場拡大にも頷けます。

未だ動物由来の肉と比べると、コストが高いことを依然指摘されているところではありますが、これからますますの市場拡大に伴い解決されるのは時間の問題でしょう。

結果的に環境問題の一助につながるということで、日本でもますますの浸透を促進したいところです。

参考リンク

This World Vegan Month, we will be celebrating 75 years of The Vegan Society!
https://www.vegansociety.com/take-action/campaigns/world-vegan-month

「人工肉」最大手のビヨンド・ミート、人気急上昇中だが危惧する声も
https://www.newsweekjapan.jp/stories/technology/2019/08/post-12712.php

Why We Don’t Need Animals to Keep Enjoying Meat
https://time.com/5601980/beyond-meat-ceo-ethan-brown-interview/

世界で広がる「代替肉」は、現代にマッチしたソリューションとなるか
https://www.lifehacker.jp/2019/09/196818what_we_know_about_fake_meat.html

世界に広がる代替肉(2019年5月7日(火)NEWS WATCH 9)
https://www9.nhk.or.jp/nw9/digest/2019/05/0507.html

MEAT THE NEW, MEATIER BEYOND BURGER™ WITH MARBLING THAT MELTS AND TENDERIZES LIKE BEEF!
https://www.beyondmeat.com/whats-new/meat-the-new-meatier-beyond-burger-with-marbling-that-melts-and-tenderizes-like-beef/

動物の犠牲の無い「肉」の時代へ-クリーンミート(培養肉)・植物由来肉(代替肉)
https://www.hopeforanimals.org/meat-free-monday/554/

China perfected fake meat centuries before the Impossible Burger
https://edition.cnn.com/travel/article/china-fake-meat-vegetarian-intl-hnk/index.html

Vegan meat: The future of planet-saving plant-based eating?
https://www.dw.com/en/vegan-meat-the-future-of-planet-saving-plant-based-eating/a-51054861

How to Feed the World in 2050
http://www.fao.org/fileadmin/templates/wsfs/docs/expert_paper/How_to_Feed_the_World_in_2050.pdf

World must sustainably produce 70 per cent more food by mid-century – UN report
https://news.un.org/en/story/2013/12/456912#.VUafntNViko

Food: how much does the world need?
https://www.weforum.org/agenda/2015/05/food-how-much-does-the-world-need/