AIデータセンターとは何か?必要な理由と市場規模、課題を解説

世界では多くの企業が大規模なAIデータセンターの建設を進めています。例えば、米国テキサス州では、Googleが複数拠点のデータセンターの建設に約400億ドル(約6.2兆円)規模の投資計画を発表しました。こうした動向は日本でも関心が高まっており、国内企業による取り組みも進んでいます。

しかし、「AIデータセンターとは何なの?」「なぜ必要とされているの?」など、疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。そこで本記事では、AIデータセンターの意味や必要とされる理由、抱える課題などをわかりやすく解説します。

AIデータセンターとは何か?

AIデータセンターとは、人工知能(AI)の演算処理に特化して設計された、大規模で高度なデータセンターです。次の3つの要素で構成されている点が特徴です。

  • 大量の高性能GPU

GPUとは、並列処理を得意とする演算装置で、もともとは画像処理などに使われてきました。大量のデータを同時に処理できる特性から、現在ではAIの演算処理にも欠かせない存在となっています。AIデータセンターでは、高性能なGPUを大量に導入することで、膨大なデータを高速に処理できる計算能力を実現しています。

  • 大容量の電力供給システム

高性能GPUを稼働させるには多くの電力が必要です。AIデータセンターでは、そのGPUを大量に運用するため、一般的なデータセンターよりもはるかに大量の電力を消費します。そのため、大容量の電力供給システムの構築もセットで進められるケースがよくあります。

  • 効率的な冷却設備

GPUは高温になると性能が低下し、場合によっては故障や火災につながる恐れがあります。そのため、発生する熱を制御するための冷却設備が欠かせません。特にGPUを大量に配置するAIデータセンターでは、効率よく冷却できる高度な装置が必要です。

こうした関係から、AIデータセンターの建設ラッシュにより、半導体や電力、インフラ、冷却装置などの関連分野の需要が高まっています。

一般的なデータセンターとの違いは何か?

一般的なデータセンターは、アプリケーションやデータベース、クラウドサービスの運用などを目的に設計されています。汎用性を重視しているため、主に使用されている演算処理装置はCPUです。

CPUを中心としたデータセンターでも電力供給や冷却設備は必要です。しかし、CPUとGPUでは消費電力や発生する熱量に大きな差があるため、一般的なデータセンターではAIデータセンターほど高度な電力設備や冷却装置を必要としません。

このように、一般的なデータセンターとAIデータセンターの大きな違いは、GPUを中核とした構成かどうかにあります。その違いが、大容量の電力供給システムや高度な冷却設備の必要性につながっています。

AIデータセンターが必要とされる背景

AIデータセンターが必要とされる理由として、AI技術の急速な進化と活用領域の拡大が挙げられます。AIは現在、生成AIや自動運転、医療、製造業などの様々な分野で活用が進められています。

また、生成AI分野における開発競争の激化も必要とされる理由の一つです。OpenAIやGoogleをはじめとする企業は、AIの性能を高めるのに、より大規模で高性能な演算処理能力を必要としているためです。

しかし、一般的なデータセンターは、AI特有の高負荷・高密度な計算を前提に設計されていません。こうした背景から、大量のGPUで構成されたAIデータセンターが求められているのです。

国内外のAIデータセンター建設のプロジェクト例

AIブームを背景に、世界ではAIデータセンターの建設が相次いでいます。ここでは、国内外のプロジェクト例を紹介します。

  • OpenAI

OpenAIの最高経営責任者(CEO)であるサム・アルトマン氏は、今後8年間で1兆4,000億ドル(217兆円)規模の投資の必要性を言及しています。この投資は、半導体工場やAIデータセンターの増設を通じて、AI開発に必要な演算処理能力を大幅に強化することを目的としています。

  • Meta

Metaは、今後3年間でAIデータセンターを含む米国のインフラや雇用に、6,000億ドル(93兆円)を投資する計画を示しています。そのうち、数千億ドル規模をAIデータセンターの建設に充てる方針です。

  • ソフトバンク

ソフトバンクは、北海道で大規模なAIデータセンターの建設を進めています。この施設で使用する電力は、再生可能エネルギーで100%まかなう計画です。将来的には、屋内最大級の規模にまで拡大する方針を示しています。

  • KDDI

KDDIは大阪にAIデータセンターを建設しており、2026年1月下旬からの稼働開始を予定しています。この施設の特徴は、直接液体冷却を採用している点です。GPUを液体で直接冷却することで発熱を効率的に抑え、安定した高い計算能力を供給するとしています。

AIデータセンターが抱える課題

AIデータセンターは新たなビジネスチャンスとして多くの企業から注目される一方で、その普及にはいくつかの課題も存在します。

中でも多くの人に影響を及ぼすのは、消費電力の問題です。AIデータセンターでは、GPUを大量に稼働させるため、莫大な電力を消費します。施設によっては、1拠点あたりの消費電力が一般家庭約1万〜1万6,000世帯分に相当すると言われているほどです。

こうした膨大な電力消費が引き起こす問題の一つは、電気料金の値上げです。

実際、米国ではAIデータセンターの電力需要が急増し、電気料金の値上げが低所得者層の負担となっています。電気料金の上昇は、家庭の負担を押し上げるだけでなく、企業にとってもコスト増につながる可能性があります。

参考:Business Insider「AI向け電力需要の急増で、冬の光熱費が上昇…富裕層より年収5万ドル(775万円)未満の低所得世帯に大きな負担

まとめ

AIデータセンターは、生成AIの普及とともに需要が急速に拡大している次世代インフラです。消費電力といった課題はあるものの、半導体・電力・再生可能エネルギー・冷却装置・インフラなど、幅広い領域でビジネスチャンスが広がっています。企業にとっては、どのように関わるかが、今後の企業戦略において重要なテーマの一つとなるでしょう。

よくある質問

ここでは、AIデータセンターでよくある質問をまとめました。

Q1. AIデータセンターはなぜ必要なのか?

AIデータセンターが必要とされる理由は、AI技術に必要な演算処理能力が不足しているためです。加えて、様々な分野でAIの活用が広がっていることも、AIデータセンターの需要を高めています。

Q2. 一般的なデータセンターではなぜAIの演算処理ができないのか?

一般的なデータセンターでもAIを動かすこと自体は可能です。しかし、AIの学習や推論では、同時に大量の計算を行う並列処理が求められます。CPUは汎用的な処理に向いている一方で、このような並列処理は得意ではありません。高性能なAIを実現するには、並列処理に優れたAIデータセンターが必要なのです。

Q3. AIデータセンターの市場規模は今後も拡大するのか?

AIデータセンター市場は、今後も急拡大すると見込まれています。Fortune Business Insightsの「AIデータセンター市場規模、シェア及び業界分析」によると、2024年のAIデータセンターの世界市場規模は150億ドルでした。それが、2032年までには936億ドルに成長する見込みです。