マーケティングの第一歩は、自分が欲しいモノに気付くこと

マーケティング

「売る力を身に付ける」をテーマに、その道で活躍する方へのインタビュー第1弾。
今回は、セルウェルを含めWeb営業力強化をテーマにWebマーケティング支援を行っているアクティベートファクトリーの三田さんにお話を伺いました。

SW:三田さんは前職の頃からWebマーケティング支援をされていたのでしょうか?

三田:はい。前職では主にBtoB企業向けに、見込み顧客獲得を実現するための支援をしていました。最近ではC向けを手掛けることもあります。

SW:なるほど。最初はそちらの取り組みや考え方についてお聞きしようと思っていたのですが……先日、三田さんが主催している「読書しない読書会」「4コマワークショップ」に参加して衝撃を受けたというか、マーケティング視点でも学びや気付きのある時間でした。
そこで今回は、三田さんが取り組んでいるワークショップ関係を中心にお話を伺いたいと思っています。

三田:そっちですか(笑)。
確かにWebマーケティング関連だと他サイトの記事とかぶりそうですから、sellwellyとしてもワークショップ×マーケティング視点でお話した方がいいかもしれませんね。

自身の課題から生まれた「読書しない読書会」

読書しない読書会

SW:はじめに、読書しない読書会についてお聞きします。
何よりネーミングが抜群にいいですよね。「読書会なのに本を読まないの? なんだそりゃ!」と。

三田:ありがとうございます。でも、最初は違うタイトルだったんですよ。読書会はこれまでに31回開催していますが、実はその間に3回ほどタイトルを変えていて。最初は「読書しないでマーケティングアイデアの引き出しを増やす読書会」でした。

SW:……行きたくないですね(笑)。

三田:失礼な(笑)。sellwellyのために、あえて過去を披露したのに。

SW:まず、どのような会なのかをお聞きしてもいいですか?

三田:読書しない読書会は、その名の通り参加者同士で本を読み合うことはしません。では何をするかというと、まず参加者は各自で大型書店の普段行かないジャンルのコーナーにあえて行ってもらいます。そこに並ぶ本を見て、「素直に感じた気付き」「刺激」を参加者同士でシェアする会です。どうしても気になる本があれば、買ってきてもらうこともあります。
一言で言うなら、「本の内容」ではなく「本を選んだ理由」を共有しあう会ですね。

SW:なるほど。一度体験しましたが、確かに「理由の共有」と言われると納得します。
本の中身よりも、その手前にある「なぜこの本を選んだのか?」という理由を考えることに価値があると?

三田:そうですね。今の世の中は、レコメンドなど周りに影響を受けて本を購入することが増えていると思います。そうではなくて、自分の感性で本を購入する。その感性に人それぞれが表れるので、そこを理解しましょうと。そもそも本を買う人も読む人も減っているので、本屋でいろんな本に出会うこと自体が新鮮だったり。

SW:確かにそうですね。ちなみに、なぜ最初はタイトルに「マーケティングアイデアの引き出しを増やす」と付けていたのでしょうか。

三田:当時はマーケティングアイデアを得るために本屋に行っていたので、そのままタイトルに付けました。

SW:「当時は」ということは、今は違うと?

三田:そうですね。マーケティングやPR支援をしていると、効果的な施策を提案して取り組むことになります。考えて、提案して、実施して……というサイクルですね。
ちなみに「考える」というのは頭の中だけでなく、実行すること=アウトプット(イメージ、触り心地、匂いなど)をどうするかも含めてなので、良い成果を出すためにはとにかく考えることが大事だと思っています。

一方で、子供の頃から受けてきた暗記教育の影響か、考える以上に「答えを探して、その答えを覚える」のが得意になっている自分もいました。社会に出てから、上司はもちろん妻からも「本当に考えてる?」と耳にタコができるほど指摘されていたんです。

SW:今の三田さんからは信じられませんね。

三田:当時は自分なりに考えているつもりだったので、「考えてるよ!」と反抗していました。今振り返ると、提案の多くは書籍やネット記事に書いてあることをそのまま当てはめていたのかなと。
つまり、提案のたびに「答えはどこかにないかな」と探して、自分なりに見つけて(パクって)提案をしていたんです。それでうまくいくこともあれば失敗することもありましたが、数だけはそれなりにこなしていました。
Aという課題のときは、aの提案をする。Bという課題のときは、bの提案をする……といったイメージで、答えを溜めていくような思考で仕事をしていたんでしょうね。

結局は「常に答えがある状態」を作ろうとしていたので、考えが浅いというか、ほぼ考えていないような状況にあったのかなと。もちろん、例え話として極端に話している部分もありますが。
ただ、周りから指摘されていたおかげで「考えること」への課題意識は常にあって、ずっと試行錯誤していました。例えば、日記を書いたりとか。

SW:その試行錯誤の中で、考えが変わるきっかけがあったということでしょうか。

三田:ある時、いつも通りヒントを求めてビジネス書のマーケティングコーナーに行ったんですけど、これといってヒント(答え)となる内容がなくて。そこで、あまり意識せずに普段行かないアート本のコーナーにふらっと立ち寄ってみたんです。

そうしたら、そこで見た本のコピーやイメージをきっかけに頭の中でいろいろなことがつながって、悩んでいた提案のコンセプトが表れるという体験をしまして。
そこからは、なぜこの本に惹かれたのかという「理由」を自然と考えていました。よほど嬉しかったのか、家に帰ってからも本屋での経験や選んだ理由を楽しそうに話していたらしいです(笑)。
それから普段行かないコーナーに行くのにハマって、「複数人でやったら楽しいのでは?」という思いから会を始めました。

SW:なるほど。まさに自身の課題や経験から生まれたワークショップなんですね。以前に参加した時、私自身も仕事のヒントになるようなひらめきがありました。

三田:そういう経験をしてもらえるとうれしいです。自身の課題や経験から生まれたからこそ、主催者の私が一番楽しみにしている会なんですよ(笑)。

「素直」になることで売る力を身に付ける

SW:相変わらず人生を楽しんでいますね。
参加した身として、三田さんの読書会はマーケッターを目指す人はもちろん、今マーケティングに関わっている人も体験した方がいい会だと直感的に思いました。

三田:褒め過ぎじゃないですか? 嘘っぽくなるのでやめてください(笑)。

SW:いやいや、本当に(笑)。
われわれも開催しているので言いにくいですが、世の中にある学ぶ場、特にマーケティング関連のセミナーはテクニックの話がメインですよね。でも三田さんの企画は、本質というか抽象度の高いところで学べる。むしろ、おのおのが気付くようになるところが素晴らしくて、他にはないと思いました。

三田:確かにテクニックのセミナーは多いですよね。「アクセス数を10倍にするためのライティング術」とか「ソーシャルメディア活用」とか。それはそれでいいけど、なんかなぁ~とも思います。

SW:その「なんかなぁ~」を知りたいところですが(笑)。
そんな三田さんにお聞きします。ズバリ、「売る力」を身に付けるためにはどうすれば良いとお考えですか?

三田:一言で言えば、「抽象的に考えられるようになること」ですね。まずは自分が欲しいと思えるモノに素直に気付けることが大事かなと。
自分が欲しいと思うものは、同じように欲してくれる人もいると思いますし。そもそも世の中には、「企画している本人が欲しいと思っていないんじゃないか」というモノやサービスが溢れていると思うんです。

例えば、読書しない読書会の参加者から「こんな自分に気付きました」とか「こういうものが好き(嫌い)だった頃の自分を思い出しました」という感想をよく頂きます。これはすごいことで、参加者は普段行かないコーナーに一人でいるうちに、本を媒介して自分と対話しているんですね。
そうすることで、自分を客観的に見て、理解して、自らの意思で取捨選択した本を購入するという成果につながります。つまり、客観的に自分が見えている状態になるわけです。

SW:言葉にすると簡単ですが、それができている人とできていない人にはとてつもない差がありますよね。

三田:そうですね。私もそうでしたが、できていない人ほどできていると思っていますから。客観的に自分が見えてくると、今度は自分の課題や不満に気付けるようになり、自分の欲しいものが分かります。そういうものって、どうしても欲しいし、実現したいじゃないですか。だからパッションも強くなる。
しかも、その課題や不満は客観的な視点がないと気付けない課題だと思うので、潜在的な課題の解決にパッションを持って取り組めるんです。

そういう製品やサービスが実現できれば、売れる可能性は高いはずです。実現できる能力や経験や手段が備わっているかどうかは、また別の話ですけどね。それに、たとえ周りから失敗と評価されたとしても、自分の課題が解決して満足できたらいいじゃないですか。

SW:なるほど。売る力を身に付けるためには、まず自分が欲しているものに素直に気付けるようになるということですね。その視点はなかったです。
さらっと話していましたが、「素直」というのも大切ですよね。

三田素直な自分でいることが極端に難しい世の中ですからね。素直でいられなくなるような情報を毎日スマートフォンで大量に見ていますし。
ただ自分の頭で考えられる人は、どれだけ偏った情報を浴びてもブレないんです。まず疑ってみるんでしょうね。とにかく情報の受け取り方・溜め方や視点が違うなと思います。共通して言えるのは、抽象化する能力がとにかく高いということですね。

私もようやく分かってきた程度ですが、本当に考えられる人とそうでない人は、見えている世界・見えていない世界が違います。
だから情報をインプットするのが有益になる人もいれば、思考力を奪われつづけることになる人もいる。これについては、どちらがいいという正解はないんですけど。

SW:ありがとうございます。売る力を身に付けるために「素直」になる。これもまた抽象度の高い話になりましたね(笑)。

三田:素直になって、自分が欲しいものに気付く。そうすれば、おのずと仕事にも活かされていくと思います。
偉そうに話しましたが、私自身も売る力が高い人間だとは思ってはいなくて。それこそ、そうなりたくて読書しない読書会を現在進行系で取り組んでいます。このインタビューを読んで少しでも違和感が感じた方に参加してもらえたらうれしいですし、一緒に成長したいですね。

SW:綺麗にまとめつつ、さり気なく宣伝してません?

三田:バレました? すみません(笑)。

SW:他の切り口でも三田さんにはまだまだインタビューができそうなので、またご協力をお願いします。本日はありがとうございました。

インタビュー日:2018年4月26日

参考:
読書しない読書会:https://actiba.net/dokusho/

4コマ ワークショップ:https://actiba.net/4komaworkshop/