盛り上がりを見せる日本の中食産業
日本の食市場は、約70兆円の市場規模(2015年)を持っていることをご存知だろうか。この70兆円の内訳は、内食35兆円(50%)、中食10兆円(14%)、外食25兆円(36%)となっている。
内食、中食、外食の定義とは、下記の通りである。
言葉の意味 | 例 | |
外食 | 外で食事をする | レストランで食事をする |
内食 | 素材を買ってきて自宅で調理してから食べる | 肉や魚を買って家で焼いて食べる |
中食 | 調理された食材を自宅に持って帰ってから食べる | 揚げたてのコロッケを買って家で食べる |
下記のグラフを見ても分かるように、一時は外食が内食に迫る勢いだったが、2008年のリーマンショック以降、外食産業の成長が止まってしまい、内食に大きな差をつけられる状況となっている。
日本の食市場規模
こうした動向の中、内食VS外食のバトルが続いてきた日本の食市場で、最近動きが活発になっているのが中食産業である。
直近の決算資料を読むと、スーパーマーケットやコンビニエンスストア各社がこぞって中食改革を成長戦略の柱に掲げており、メニュー開発、設備投資、調理者教育などに本気で取り組み始めている。
調理された食材を自宅に持って帰って食べる中食では、どのように調理したかによって各チェーンごとに味付けが異なる。この点に最も強い差別化要素があり、スーパーマーケット、コンビニエンスストアは顧客囲い込みのために日夜取り組んでいる。
コンビニとスーパーの惣菜にみるイメージの差
マーケティングリサーチを主要業務としている弊社では、消費者インタビューもたびたび行っている。その中で、店内調理した惣菜の良し悪しについて「スーパーマーケットとコンビニエンスストアでは、どちらの方がおいしいのか」をヒアリングしたことがある。
100名の有効サンプルのうち、スーパーマーケットと回答した方が67%、コンビニエンスストアと回答した方が33%という結果になり、この時は「スーパーマーケットの方がおいしい」という回答が多かった。
中でも、「スーパーマーケットは食材が新鮮なものが揃っているのでそのイメージもある」「コンビニエンスストアの方は、食材も油も身体に悪そうなものを使っていそう」というコメントが印象的だった。
かつてコンビニエンスストアの本部社員だった筆者は、この結果に大きなショックを受けた。
コンビニエンスストアのフライヤー商品は原材料が厳選されており、トレーサビリティなどの品質管理もしっかりしている。どの店舗で誰が調理しても同じ品質になるように、おいしい商品を提供するための仕組みができているのだ。
中食改革に取り組むための第一歩とは
では、なぜ「コンビニエンスストアのフライヤー商材はおいしくない」と言われるのだろうか。
その理由の一つに、コンビニエンスストアの食品に対する健康面でのイメージの悪さが挙げられる。
そしてもう一つは、鮮度が劣化した廃棄処分すべき商品に対する管理の不徹底、あるいは廃棄したくないがためにいつまでも販売ケースに入れているという現状だ。
前者については、特にセブン-イレブン・ジャパンがその払拭に努めてきた。
コールドチェーンといわれる野菜の鮮度を保つため、収穫地から店頭に並ぶまでの低温配送・低温管理を徹底。さらに保存料や合成着色料の排除など、食の安心安全を推し進めているが、まだまだ消費者には伝わっていない。
鮮度管理についても、現状では十分な対策がなされているとは言いがたい。廃棄処分すべき商品と揚げ立ての商品では、当然ながら味は雲泥の差である。
美味しい状態のものをいつでも提供することは容易ではないが、本部は鮮度管理ができていない店舗を徹底的に指導すべきであり、店舗も顧客の立場に立って経営を見直すべきではないだろうか。
まずはこうした店舗オペレーションを見直さなければ、本当の意味での中食改革は進まないだろう。商品開発だけでなく、“商品をいかにおいしく提供できるか”もまた、中食改革なのである。
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