個人と向き合う最適のコミュニケーションメディア?ラジオの魅力

ラジオの魅力

ラジオ、聴いていますか?芸能人たちがこぞってyoutubeを始める流れがある一方で、実は音声メディアを開始するプロフェッショナルたちが増えている傾向があるのをご存知でしょうか。今回は昨今の音声メディア事情についてみてみたいと思います。

音声メディアが流行っている?その背景にあるもの

音声メディアの種類

ラジオ
1925年から始まった戦時下ではプロパガンダ的役割を果たしたとされています。もっとも知られた放送はやはり1945年8月15日の終戦ノ詔勅玉音放送でしょうか。1960年以降は一般家庭にテレビが普及していくに従って、斜陽化されたとされています。その後、2000年代からは地上デジタルラジオ放送が開始されました。そのため現在ではradikoなどを中心に、オンライン上でのアーカイブ再生も可能になっていることから、リスナーとしては、次にご紹介するネットラジオとの差はほとんどなくなってきているのかもしれません。

インターネットラジオ
インターネットプロトコルを通じて、主として音声で番組を配信するインターネットのコンテンツの一形態とされています。ラジオという名前であるもののインターネット上にて配信されているため電波を使うラジオとは異なります。しかしながら昨今私たちが「ラジオ」と呼ぶもののなかにこのインターネットラジオと前述のラジオとの差はなくなりつつあるかもしれません。現に「ラジオ」の音源を「インターネットラジオ」でもアーカイヴとして配信しているチャンネルが数多く存在しているのが昨今の現状です。

・主なサービス:radikoVoicySoundCloudiTunesSpotifyOverCastGoogle PodcastsLISTENNOTESなど

オーディオブック
いわゆる本を読み上げてくれる音源です。移動の主要手段が車であったアメリカを中心に1980年代頃に広まったとされています。インターネット普及前の日本では、媒体によってカセットブック、カセット文庫、CDブックなどさまざまな呼び名がありました。

今回の記事の趣旨からは外れますので軽く触れるにとどめますが、目で文字を追う読書の変わりに、耳から音として本の情報をインプットする役割を果たします。速読や読書の効率化の一助になるとされていますね。

・主なサービス:Audible(オーディブル)・ボイスブックaudiobook.jpLibriVoxなど

アメリカの音声市場規模は1,600億円。背景にあるのは現代人の忙しさ

このように音声のみのメディアというのは、現代も数多く存在しています。その背景にあるのが、現代人の忙しさ。前述の通り、アメリカでラジオが発達した背景にあったのが長時間の運転の際の時間つぶし。このことから、そもそも音声メディアには「ながら聞き」という要素が強く存在していることは否めません。

現在アメリカは音声市場規模は1,600億円と言われている一方で、日本のそれは500億円程度と話者の数に比例してしまう部分は否めませんが、たとえば、日々の通勤ラッシュの電車のなかで本や新聞を広げることが難しくても、音声メディアであれば効率よく情報収集や気分転換、新しいアイディアに触れることが可能となります。

だれもが忙しい毎日を送るようになった現代だからこそ、隙間時間を当てることのできる気軽な音声メディアに、改めて注目が集まっているのです。

ビジネスマン必聴、注目のチャネルとは

ロンドン発・雑誌初・週100万人以上が視聴する『Monocle 24』

Monocle 24
https://monocle.com/radio/

2007年にローンチしたマガジン『MONOCLE』が展開するラジオステーション。BBCラジオ形式に倣う形で同媒体による音声メディア『Monocle 24』は2011年に開設されました。HQのあるロンドンのMidori Houseにて毎週放送されています。

2011年のインターネットラジオ開設から8年、2019年現在は本サイト内にて、約20近いチャンネルが展開されておりプラットフォームとしての役割を果たしています。2016年には週間視聴者数が100万人を超え、編集力に支持されているメディアならではのアウトプットの形式に縛られない成功例といえるでしょう。紙面・オンライン、インターネットラジオと多角的に展開をつづけるメディアです。

デザイン・イノベーション・ファームがデザインを伝える『Takram Cast』

Takram Cast
https://soundcloud.com/takramcast
https://voicy.jp/channel/832

東京、ロンドン、ニューヨークにオフィス(デスク)を構え、企業や組織が限界や領域を超えていくことを現実にするデザイン・イノベーション・ファーム、Takram。Takram Castは2年以上運営されており取り組んだ案件についての発信やゲストを交えたディスカッションなどデザイン・テクノロジー・ビジネス・文化など幅広い内容を発信しています。昨年からはJ-WAVEでもラジオ番組『TAKRAM RADIO』が始まりました。

爆笑問題もリスナー、聴く ‘ジャーナル’ 『バイリンガルニュース』

バイリンガルニュース

すでに6年近く運営されている有名&老舗チャンネル「バイリンガルニュース(@Bilingual_News)」。スポンサーをつけずに運営しているという中庸の姿勢が、多くのリスナーに支持されている理由といえるでしょう。政治の話題から性問題まで、話題に偏りがないのもリスナーに偏りがない理由と言えそうです。

2013年より開始した、毎週木曜日配信の無料ポッドキャスト。日本であまり報道されない世界のおもしろいニュースを、マイケルとマミの二人が独自の「バイリンガル会話形式」で紹介しています。不定期の特別編では、様々な分野のゲストをお招きし、ほかではなかなか聞けないフリートークを展開しています。発言の自由を守るため、あえてスポンサーはつけず、自腹で運営中。番組も公式アプリも、広告は一切入れていません。

VCたちによるアメリカスタートアップ&テック情報ニュース『Off Topic』

Off Topic

ベンチャーキャピタルで働く2人がお届けする主にアメリカのスタートアップやテック界隈の情報発信チャンネル「Off Topic(@OffTopicJP)」。ちなみに草野ミキさんは高校生の頃から企業訪問ブログ『ミキ☆レポ』を運営していました。

「Off Topic」では、VCで働く草野ミキと宮武テツローが、米国スタートアップやテクノロジーに関する最新ニュースを脱線=off-topicしながらもゆるーく配信しています。ご意見や感想はこちらまで!@OffTopicJP #オフトピック

第一線で活躍する女性たちによる最新テック情報の ‘持ち寄り会’『The Potluck』
The Potluck

The Potluck

アメリカや日本でのテック女性のコミュニティとして生まれた「The Potluck(@ThePotluckUs)」。‘持ち寄り料理’ ‘あり合わせ料理’ といった意味をもつ単語 “Potluck(ポットラック)” という言葉の通り、テックやブランド情報感度の高い女性たちが、いま気になる話題を持ち寄って、遠距離での会話を繰り広げていることで話題を呼んでいます。

The PotluckのRieとNagisaがアメリカ・サンフランシスコやニューヨーク、時々東京の気になるプロダクトや企業、ブランドについて異なる角度から読み解いていきます。

チャネル運営するメリットと注意点

人気・長寿チャネルに共通する点は「意図」と「ユルさ」

今回は比較的ニュース、ジャーナル、ビジネス食の強いチャネルをご紹介したので偏りはありますが、このようなジャンルでの人気番組の共通点として以下の2点が挙げられます。

チャンネル運営の意図が明確:この番組を聴くことで、リスナーがどのような情報をゲットできるのかが明記されており、実際にそれを裏切らない発見が毎回ある

適度なユルさ:①のような明確さがありつつも「講義」のような堅苦しい雰囲気の番組にはならず、他人の会話を盗み聞きしているような近い感覚がある

生の声を発信すること=長期でのブランディング

このように形式問わずメディアに必要なことでもある「続けること」というのは(インターネット)ラジオの場合も例外ではありません。

実際に上記でご紹介したチャネルのいくつかも「企業として一言で事業内容を説明することが難しい」「ステマではない生の声を届けたい」「良質なコミュニティ運営のために効果的なアウトプットの場をつくりたい」といった課題解決のために活用しているケースが多いように見受けられます。

そのためにも、①②を沿いつつも独自の発信を続けることが、ブランディングとして有用であるといえるでしょう。

代表による発信が逆効果になることも

しかしながらひとつ注意しておきたいのは、状況次第ではこのブランディングが逆効果になってしまう危険もあるということ。「その企業が優位になるように恣意的に発信しているのでは?」と勘ぐられてしまうとそのブランディングは逆効果となってしまいます。

たとえば4月にフェイスブック創業者でCEOのマーク・ザッカーバーグ氏の『Tech & Society with Mark Zuckerberg』。彼の個人的な挑戦のひとつとして年始に開設されたチャンネルである本番組は、毎回「テックと法」「テックとジャーナリズム」などについて有識者とのディスカッションする番組です。しかしながらフェイスブック自体が直面している問題(ニュースフィードの選定方法やターゲティング広告、フェイクニュース)には触れずに理想を語る姿に厳しい評価が相次ぎました。

“個人” と向き合う未来で、ラジオは最適なコミュニケーションかもしれない

SNSの浸透とともに、加速度的に、企業がユーザーとより近い距離でのコミュニケーションが求められるようになり久しいです。今後、企業はいかに納得してユーザーを魅了できるか、気持ちよくお金を払ってくれるサービス価値を提供するか、ということを明確に求められるようになっていくでしょう。

その一助として私たちが深夜ラジオに酔狂したように、音声メディアというのはもしかしたらユーザー個人と深くコミュニケーションを取るにはとても有用な方法といえるのかもしれません。

もちろん字幕がつかないメディアですから、言語の壁というものは存在します。しかしながら、ライブ配信のように時差によって発信地域が限られることもなく、制作コストが動画よりも安価に済み、ある意味で「ユルく」いられるということで、スモールスタートが可能という運用コスト上のメリットは大いに考えられます。

地道さが求められるブランディングではあるかもしれませんが、その価値の大きさや一度できたファンコミュニティの強さは、もしかしたらラジオがつづいてきた100年という長い歴史が証明しているかもしれません。

参考文献

ラジオ / Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A9%E3%82%B8%E3%82%AA

インターネットラジオ / Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%8D%E3%83%83%E3%83%88%E3%83%A9%E3%82%B8%E3%82%AA

オーディオブック / Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%BC%E3%83%87%E3%82%A3%E3%82%AA%E3%83%96%E3%83%83%E3%82%AF

Net radio station aims for BBC World Service audience
https://www.telegraph.co.uk/finance/newsbysector/mediatechnologyandtelecoms/digital-media/8832451/Net-radio-station-aims-for-BBC-World-Service-audience.html

一般社団法人 日本編集制作協会 株式会社オトバンク 上田 渉氏インタビュー
http://www.ajec.or.jp/interview_width_ueda1/

声のブログ「Voicy」にハマる人が急増中の理由とは?
https://marketingnative.jp/what-is-voicy/

A Conversation with Jonathan Zittrain on the Future of Technology in Society
https://newsroom.fb.com/news/2019/02/marks-challenge-jonathan-zittrain/

We listened to Mark Zuckerberg’s new podcast so you don’t have to
https://www.wired.co.uk/article/mark-zuckerberg-podcast-review